梅見月ふたよの創作系裏話

創作物に関する独り言を連ねる日記帳

黄色の花の物語、更新しました

前回から一ヶ月以上も経っていることに恐怖を感じています。

何はともあれ、最新話『報われぬ想いに花束を』、更新しました。

長いです。文字数にして大雑把な四捨五入で二万文字。正確には判りません。大文字小文字の関係か、サイト様ごとでカウントが表示する数が違うので。大体二万文字。

もう読み切り短編の体は諦めるべきでは。普通に続き物として連投したほうが絶対読みやすいよねコレ。と、何度も何度も何度もセルフツッコミしてきましたが、そもそも、書き出し数行の時点では本当に毎回ここまで長くなると思ってないのです。二千文字越えた辺りから雲行きが怪しくなって、三千文字で焦り始め、四千文字で頭を抱える感じ。何故なのか。

【目指せ○○!】と書いたり発言したりすると真逆の結果になるジンクス、もはや呪いなんじゃないかと思えてきました。あるいは言葉を弄してはいけませんという天の啓示か。ネガティブ方向は全スルーするクセにぃ。

それはともかく。

 

『報われぬ想いに花束を』ですが、ベルゼーラ王国を舞台にした、オーリィードの実姉シウラの話です。

リブロム王の婚約者としてベルゼーラ王国へ移住したシウラが、その後どうしていたか、何をしているかを書いています。

が。

情報量が多い上に複雑すぎて、私の頭がパンクしました。脳が、破裂した風船の残骸のようになりました。⚠︎イメージでお伝えしております⚠︎

実際に本文を読んで『え、これくらいで?』と思われた方がいらっしゃいましたら、それは私が、誰が見ても分かりやすくなるようにと、めちゃくちゃ頑張ってまとめ上げたからです。褒めてください。喜びます。懐きます。

実際に本文を読んで『ああ、なんか解る。ごちゃごちゃしてるし、分かりづらい』と思われた方がいらっしゃいましたら、どうかご指摘をお願いします。まだ破裂した風船状態なので沈黙時間が長くなるかとは思いますが、是が非でも改良します。分かりやすくなるまで何度でも直します。そしてやっぱり喜びます。懐きます。

失礼、脱線しました。

『報われぬ想いに花束を』には、おまけ以降に出てきた情報が集約されています。サーラとティアンの契約もそうですし、マッケンティアがフリューゲルヘイゲンで起こした騒動の源『カラーアイレンズ』もそう。ついでに、鴉さん達侵攻派勢力もちゃっかり暗躍しています。どこで、とは書きません。ぜひ探してみてください。

また、タイトルに複数の意味を持たせたがる私のクセも強めに出た回かなと思います。

新しく登場したシウラの侍女シャルの存在と内面をどう判断するかで、この話の意味と構成も変わるのかなと。書いた後で思いました。あまりにも情報量が多すぎて、書いている間はずっと話の輪郭が掴めてなかったんです。

シャルに関しては、また後日。

 

今日はここまで。

ひとまず、今は猛烈に眠いので、おやすみなさいです。

 

黄色の花の物語、更新しました

最新話『みすてりぃは突然に』。

とにかく文字数を減らす! 文章量を減らす!

と、頑張ってはみたものの、どうしても一万字を超えてしまうので、章仕立てにして一話を複数に分割しました。休憩ポイント代わりになれば良いのですが。

こちらも一応、完結後に手入れをするつもりです。

 

ゴールデンウィーク中は作業と更新を止めて、頭を休ませる予定です。

隙あらば作業画面と睨めっこしているからか、それとも格安ワイヤレスイヤホンの音質が問題なのか、頭がうまく働かないのです。

ボーっとしているというか、麻痺している感じでしょうか。

思い入れの面で中途半端な作品にはしたくないので、より深く楽しめるようにしっかり休んでから再開したいと思います。

 

ちなみに、みすてりぃの中身はマッケンティアのリベンジであり、新技術が生み出す弊害に関する問題提起であり、ただのノロケです。

孫が産まれてマッケさんも表情豊かになりました……と言いたいところですが、孫にデレてるだけで、元々表情は豊かな人です。マッケさんは案外子供っぽい。

と思わせておいてからの、ラストが見所かも知れません。

次回は舞台をベルゼーラに移します。

今度こそ、目指せ・四千字以内!

黄色の花の物語、更新しました

ずいぶん長く掛かってしまいましたが、ようやく形に出来ました。

最新話『アルベルトの事情』。

毎日毎日画面と睨めっこして、文章どころか言葉にもならなくて、モヤモヤしたりすっごく焦ったり開き直ったつもりでやっぱり焦ったりしながら、どうにかこうにか書き上げて。

今、ちょっと魂が抜けかけています。

ここの文章はおかしいかも知れませんが、ご容赦ください。

 

今回は、文章の書き方を変えてみたり、アルベルトの事情と銘打っておきながらアルベルトの地の声は無かったり、読み手さんをミスリードする試みをしてみたり、言葉選びを砕けたものにしたり、いろいろやってます。

書いてる間は形にしようとするだけであっぷあっぷでしたが、読み返すと視点は追えていると感じたので、成功はしていると思います。

強いて挙げるなら、ギャグテイストをもう少し強めにしても良かったかも知れない(走らせ過ぎて滑った経験から、ちょっと慎重)。

どこら辺にミスリードポイントがあるか、興味を持ってくださった方がおられましたら、ぜひご一読してみてください。

 

ここのところ黄色の花の物語に齧り付いて散歩を放棄していたので、明日はちょっと長めに歩かなきゃです。

次の話はもう少しはや……あ、目標を書くと崩れるジンクスがあるので、未定で。

ではでは。

おはようございます

家人に合わせて動くことが多い実家暮らし。

昨日、今日、明日は創作お休みで、久しぶりにツィッターを覗き見ています。

良い事、悪い事、考えさせられる事、悲喜交々。

自分には無い視点、何度も目にした論争。

お祝い事や嬉しかった事など、いろんな人が居るなあと、改めて感じ入りました。

変なことをツィートしない、っていう忠告には笑いました。私は手遅れだ。今更取り繕っても意味ないし、平常運転で行きます。

といっても、ほぼ全部創作に回してしまうので、普段からそんなに呟く事は無いんですが。

なんというか、見つけてくださった方々や読んでくださっている方々に、もっと楽しんでもらえるような使い方をしたいです。ツィッターもブログも。

そう考えると、作品を完結させることがなにより一番なのでは? になって、結果長期間ノーリアクションになってしまうのは本当にどうにかしたい。

 

とりあえず、朝ごはんを食べてきます!

今日は何をしようかな……。

黄色の花の物語、今夜20時更新予定です

ギャグっぽくしたかったのですが、なんかこう、運動部の練習風景を見ているだけ、みたいな形になってしまいました。何故だろう。

オチが弱い? 見所はドコ? みたいな……。

直したい気持ちもあるにはあるんですが、直し方も分からず。

言いたいこと、伝えたいことは間違いなく入っているので問題はない筈です。

やっぱり前回があまりにも甘すぎて感覚が狂ったか。

とりあえず、ご飯を食べてから最終チェックしてきます!

黄色の花の物語、更新しました

すごく恥ずかしいです。

何が恥ずかしいって、糖分過多なキャラクター達のいちゃつきぶりが恥ずかしいです。

良きも悪きも全部書きたいと豪語しておいてなんですが、砂糖の塊は胸焼けします。キリキリと。

でも、とりあえずこれで、書かない先もハッピーエンドが確定しました。アンハッピーエンドルートが完全に見えなくなったので、問題だったのはアーシュマーの正体ではなく、グローリア=シュバイツァーの心の在り方だったみたいです。私がアーシュマーの視点に気付けるかどうかも関係していたのかも知れませんが……万事解決。おけおけです。

と、私はこんな風に『……』などの記号を高頻度で使っているので、文章だと鬱陶しく感じる方もおられるのではと前々から思っていました。

ただ、頭の中の声というか『間』をできるだけ正確に表現しようとすると、どうしても減らせなかったりします。減らすと違和感が出たりもしますし。

そこで、今回ツィッターでの宣伝に一部朗読を付けてみました。記号に込めた『間』のイメージが少しでも伝わると良いのですが。

やってみて分かったんですが、朗読って凄まじく大変ですね。滑舌が悪いとか音が安定しないとか息が続かないとかもそうですが、一番大変だったのはアーシュマーのセリフの「どうぞ」です。

たった三音の微妙なイントネーションの違いが、アーシュマーという人物の印象をガラリと変えてしまう。

柔らかい物腰の程度、お茶を差し出す相手への愛情の深さなど、この「どうぞ」だけで全部伝わってしまうんですよ。この部分だけで何時間練習したことか。

頭の中から音声を抽出する機械があったら良いのに。どうせなら映像とセットでお願いします。

まさに今どうでもいいことに気付いたんですが、この話の時点のアーシュマー、私より年下だな……。

本当にどうでもいい。

お砂糖尽くしの、読み切りじゃない読み切りは今回まで。次回からは本当に表紙裏の四コマ漫画的なノリです。ギャグなノリです。むしろ勢いだけで、笑えるのかどうかは不明。一話ずつめっちゃ短くしたい。したい。

したいは希望。

希望や予定は即ち未定。

今のところフリューゲルヘイゲン勢、特にグローリア=ヘンリーが活躍しそうな予感がしています。

脳筋民族って、なにかとイジりやすいから……。

鴛鴦の契りには後日挿絵を追加予定です。

そろそろラストスパートです。

頑張りますが、明日はお仕事だー。

SS2【ドキドキサプライズ・アンサー1】

「本日、陛下のお渡りがございます」

 日没後、ルビア付きのメイドであるポーラが無表情でそう告げた。

 結婚後何度か聞いた、久しぶりの業務連絡。

 いつものルビアなら、何の感慨もなく了承の一言を返すだけだったが。

 今回だけは勝手が違う。

 否応なしに胸が高鳴り、足下から突き上げるような期待で、全身が一瞬にして真っ赤に染まった。

「ぽ、ポーラ。その陛下は、光? 影? どちら?」

 ここ、フリューゲルヘイゲン王国には、国王が二人居る。

 一人は表向きの国王で正統な王でもある光の鷲、グエン=シュバイツェル。

 もう一人はグエンの影武者を務めていた影の鷲、グローリア=ハインリヒだ。

 初代国王から続くシュバイツェル王家の血を継いだ男性グエンと、初代宰相から続くハインリヒ家の血を継いだ女性グローリアは、その実、二人一組で当代国王ダンデリオン=シュバイツェルの看板を背負っている。

 これは特一級の国家機密なので、フリューゲルヘイゲン内でも知っている者はごくわずか。

 ポーラは、ルビア皇女が嫁いでくる前から信を置くメイド兼暗殺者として、ルビアと情報を共有していた。

 乞うように潤んだルビー色の目で見られたポーラは、一切の情を捨て去った顔で首を横に振る。

「光の君でございます」

「あらそう」

 ころっと態度を変えるルビア。

 期待も熱量も瞬時に冷め、興味無さげに窓の外へと視線を投げる。

「例のお祝いでもしてくださるのかしらね。お祝いの品にしろ何にしろ、光の鷲にいただいても全然まったく欠片も微塵も嬉しくないのだけど。というか、今夜はグローリア様との逢瀬に行かれるとばかり思っていたのに、どういうおつもりなのかしら。せっかくグローリア様も何かを考えておくと仰っていたのに、ご厚意を棒に振るなんてありえませんわ、あのすっとこどっこい。お二人で過ごされるのも、それはそれで腹立たしいけれど」

 舌打ちでもしそうな勢いで夫に悪態を吐く正妻。

 さすがにそれは王妃としてどうなのかと言いたげに、ポーラの目が細くなる。

「そんな目で見なくても解っていますわ、ポーラ。私はフリューゲルヘイゲンの当代王妃。国王陛下のお求めがあれば、どんなに憂鬱でもお応えするのが私の役目。すぐにお迎えの支度をして。それなりのおもてなしでね」

「……かしこまりました」

 静かに頭を下げたポーラの退室を見届け、ルビアはソファーに身を沈めた。

 天井を見上げ、溜めていた息を細く吐き出す。

「やっぱり、期待なんかするものではありませんわね。本当……懲りない私」

 期待、してしまう。

 もしかしたらと、焦がれてしまう。

 欲しいと思ったものが手に入ったことなんて、生まれてから一度たりともなかったというのに。

「愚かしい」

 そっと閉じた目蓋の裏側に愛しい人の笑顔を思い浮かべ。

 自分には決して向けられないそれに、悲しみの蓋を閉じた。

 

「ようこそおいでくださいました、ダンデリオン陛下」

 部屋の外からポーラの声が聞こえてきた。

 既に支度を終えたルビアが、夫を迎え入れる為に扉の前で待ち構える。

 結婚記念日のお祝いとやらがどんな形であれ、相手がグエンならば、いつも通りの展開になるだろう。

 軽食と適当な歓談、そして夜伽。

 形式的で事務的な国王夫妻の義務。

 まさか王太子を立てた後にまで求められるとは思わなかったが、グエンがそうしたいと言うのなら、ルビアに逆らう権利は無い。粛々と受け入れるのみ。

 扉のノブが動くと同時に夜着の裾を両手でつまみ、腰を落として頭を下げる。

「お待ちしておりました、ダンデリオン陛下」

 機械的な決まり文句。

 感情が宿らないそれに、入室したダンデリオンは柔らかい声で応じた。

「お待たせしました、ルビア王妃陛下」

「………………え!?」

 パッと上げた顔。

 目の前で微笑んでいるのは、グエンでは、ない。

 国王の装いをしたグローリアだった。

「え、グローリア様が、何故……ポーラ、どういうこと!?」

「申し訳もございません。ルビア陛下には御内密にとのお話でしたので」

「そういうことです。私の願いを聞いてくださったポーラ夫人をお叱りになりませんよう、お願いいたします」

「叱るなどっ……ああでも、どうして! グローリア様が来てくださるのならば、もっと良いお迎えをいたしましたのに!」

「先に言ってしまったら、サプライズにならないでしょう?」

「! 昼のあれ……、本当に……?」

「はい。ルビア王妃陛下のご要望にはお応えできませんが、それに限りなく近い事で結婚記念日のお祝いに参りました。お相手願えますか? 我が妻ルビア」

 国王としてルビアの手を取り、甲に恭しく口付けるグローリア。

 茫然とグローリアを見つめていたルビーの目が徐々に大きく開いていき、白い肌が果実のごとく熟れた。

「こちらこそ……こちらこそ、よろしくお願いいたします……っ!」

 カタカタと小刻みに震える手でグローリアをソファーに招き、国王の装いを軽くしてから、軽食をつまみつつ落ち着かない歓談。シュワシュワと泡立つ黄金色の飲み物をフルートグラスに注いでは空け、注いでは空け。

 居丈高に振る舞う高貴な淑女はどこへやら、真っ赤な頬を隠せもせず、グローリアの言葉に相槌を入れてはぴるぴる震え、きょどきょどと不自然なほど目線が泳ぐ。

 そんな彼女にグローリアは小さく笑い、手を差し出した。

「ベッドへ参りましょう」

「ふゃあ……っ!?」

 ビクーッと肩を跳ね上げたルビアに構わず、ルビアの手を引いてベッドの端に座り。

 隣へどうぞと、布団をポンポン叩く。

「しっ、失礼、します!」

 ガチガチに固まったぎこちない動きで、グローリアの左隣に座る。

 二人の左手側には、二人分の枕が置かれていた。

 グエンがそうしていたように、グローリアも右手を伸ばして覆い被さる……と思いきや。

 左手でルビアの肩を抱き、失礼しますと言ってグローリア側に引き寄せられた。

 鍛え上げられたしなやかな脚の上に右耳を乗せる形で、こてんと横になる。

「…………あの……、グローリア様……? これはもしや……」

「膝枕です。ご不快ですか?」

「ご褒美です! ご馳走様です!!」

「ごちそうって……。喜ばれたのなら幸いです。今宵一晩は空けておきましたので、気兼ねなく使ってください」

「使っ……!?」

「枕としてですよ。それ以上はご容赦ください」

「ひゃわっ」

 髪を優しく撫でられ、驚きと緊張で身体が跳ねた。

 やめますか? と尋ねてくるが、ルビアはすかさず首を振り、グローリアの左手に自分の手を重ねた。

「………………枕なら、私の独り言も聴いてくださいますわよね?」

「……はい。貴女だけの枕ですから、ご随意に」

 キュッと、汗ばんだ手に力が込もる。

「貴女だけ……。そう。貴女だけだったのです、グローリア様。貴女だけが、私自身を評価してくださった。貴女だけが、厄介者で不要品な第三皇女でも、皇国への窓口でもない私を見て、私という人間に価値を与え、その価値をグローリア様には必要ないのだと切り捨ててくださった。私の価値は、私が与えたいと思った相手に捧げれば良いのだと。貴女だけが、私自身の意思を認めてくださったのです。グローリア様」

 驚いたように跳ねた手をルビアの口元に手繰り寄せ、手のひらに口付ける。

「あの日から、私の心は貴女だけの物。私の価値は全て、グローリア様への捧げ物」

 愛しています。

 愛しています。

 愛しています。

 たとえ、貴女が私を必要としていなくても。

「私の持てる全ては、グローリア様だけの物。だから……グローリア様は、本当に愛する人の許へお戻りになられてください」

「ルビア?」

「既に貴女の物である私から贈れるお祝いの品は、それしかありませんの。グエン様との時間を大切になさって、グローリア様」

 グローリアの手を頬に当てたまま頭の向きを変え、微笑みで見上げる。見開かれた黒紫色の目はグエンと同じ色なのに、ルビアにはまったくの別物に見えた。

 神秘的な夜の空。

 ルビアには決して踏み込めない聖域。

「……貴女は不思議な女性ですね。体当たりで迫ってきたかと思えば、波のように引いていく」

「美しい表現で ひゃあっ!?」

 グローリアが手を引き上げ、自ら起き上がったルビアの身体を枕側に押し倒した。

「な、ぐぐっ、グ、グロー、グローリア様っ!?」

「まるで最初から嫌われていても構わないと諦めていたかのようだ。嫌われても良いと諦めていたのに、すがりつくことをやめられない子供」

 背後から腹部に腕を回され、耳元に唇を寄せられて。

 ルビアの身体中が燃えそうな赤で埋め尽くされる。心臓がバクバクと悲鳴を上げる。

「確かに私は貴女を求めてはいませんが。今宵一晩は貴女だけの枕ですよ、我が妻ルビア。淋しい夜くらいなら、抱き締めて差し上げます。だから、今にも泣き出しそうな目で無理矢理笑わないで」

「グローリア様」

 二人で枕に頭を乗せて横たわる。

 隙間なくぴったりとくっついた身体が温かくて、なのに、とても……遠い。

 実直で、誠実で、愛しいからこそ、残酷な人。

 全部はくれないのに、突き放してもくれない。

 いっそ斬りつけてくれれば良いのに。

 立ち直れないくらい斬りつけて、離れてくれれば良いのに。

 まるで、綿で作った優しい鎖にやんわりと縛られているかのようだ。

 願ってやまなかった腕の中は、悲しいくらいに愛しくて。

 淋しくて堪らないのに、離れたくない。

「……私が抱き締めても良いですか、グローリア様」

「添い寝までなら」

「嬉しい」

 緩んだ腕の中でくるりと向きを変え、グローリアの背中に腕を回してしがみつく。

 忌々しくもグエンと同じ香り。

 グエンとは違う女性的な身体。

 柔らかい胸に顔を埋め、目蓋を閉じた。

「おやすみなさい、グローリア様。……ありがとう」

「おやすみなさい、ルビア。良い夢を」

 かつて感じた例がない安らぎに包まれ、いつの間にか入室していたポーラが部屋の灯りを消していったことにも気付けないまま、ルビアは深い眠りに就く。

 夢の中で、グローリアは屈託なく笑っていた。

 グエンではなく、ルビアに。

 ダンデリオンとしてではなく、グローリアとして。

 だから、ルビアも笑った。

 現実ではありえない、夢だと分かる幻の中で。

 ルビアという人間として、笑った。

 

「愛しています、私の『たんぽぽ(ダンデライオン)』」

 

 翌朝。

 健やかに眠っていた女性が、もう一人の女性の口付けを頬に受け止めて目を覚ました。

 どちらがどちらであったのかは、本人達しか知らない。

 

           おしまい。